ようやく、手がかじかむ
寒い季節が終わりました。
あたたかい日差しを求めて
外に出てみると、
白や赤に咲く
小さな梅の花に気がつきます。
お供えにも、季節のめぐりを
一緒に感じられるものを……
と思って、
素朴な梅のお菓子を選びました。
山形県、乃し梅本舗 佐藤屋の
「乃し梅」です。

山形銘菓「乃し梅」は、
梅と寒天でできたお菓子。
素材の色や香り、
ありのままの美しさを生かした
「乃し梅」ですが、
中でも創業およそ２００年の
老舗の「乃し梅」は、
透き通る宝石のような上品な佇まい。
小さく折り畳んで
お皿に盛り付けると、
早春の光をいっぱいにためて、
こっくりと深い琥珀色に輝きます。

竹皮の包みをめくると立ち上る、
目が覚めるような爽やかな梅の香り。
もっちりとした食感とともに、
口いっぱいに広がる
フルーティな酸味と甘み。
県産の完熟梅と水飴、砂糖、
寒天のみから作る
シンプルな製法だからこそ、
梅本来の風味が引き立ちます。
どこか懐かしい素朴な甘酸っぱさに、
心が穏やかになる味わいです。

晴れやかな気分を誘う「乃し梅」。
その起源は、雪深い山形ならではの
「のして（＝薄く引き伸ばして）
乾燥させる」という
食料保存の
知恵にあるのだといいます。
厳しい寒さを超えて
感じる春の恵みと、人々の営み。
そんな風景に思いを馳せながら、
今日は「乃し梅」をお供えします。