金沢 うら田の箔の音 金沢 うら田の箔の音

美味しいお供え

[石川県]
金沢 うら田の箔の音

Culture
2022.4.22

一緒に食べた思い出の味、旅先で見つけた小粋なお菓子。日本全国それぞれの土地で愛されてきた、思わず顔がほころぶおいしいお供えをご紹介します。

母と私の
ティータイム

手芸や粘土細工が好きで、
いつも手を動かしていた母。
もの静かで
騒がしい場所が苦手な母が、
唯一連れて行ってくれたのが、
地元の花火大会でした。

花火 花火

8月最後の土曜日。
夏休みが終わる直前に、
毎年その日はやってきました。
母が私に選ぶ服は
白や茶色ばかりでしたが、
花火大会の日だけは
白いお花柄の浴衣に
赤い帯をキュッと締めるのが
お決まりでした。
履き慣れない下駄を履き、
少し背伸びして家を出る。
それだけで自分に自信が
持てるような気がしました。

お供えのお菓子 お供えのお菓子

初めて金沢に来たあの日、
金沢駅の売店で「箔の音」という
お菓子を見つけました。
華やかな金色の袋を開けると、
薄茶色の丸い
おまんじゅうのようなお菓子。
口に入れると
バターの香りがふわりと広がり、
カステラの中には、
ほんのり甘い黄身あんが
入っていました。

柔らかくてやさしくて、
心がじんわりあたたかくなる。
そして中央には
スッと一筋の赤いライン。
その緊張感ある佇まいに、
赤い帯締めの浴衣を着た、
幼い自分の姿が重なりました。
そのラインはかつて
母がつけてくれた帯締めのように、
頼りない自分を導く
一筋の光に思えたのです。

赤い帯締め 赤い帯締め

封を開けた瞬間の甘い香り、
美しいラインに金箔のかがやき。
穏やかさと凛々しさが
ひとつに合わさったような
緊張感のある佇まい。
「箔の音」はキリッと気持ちが
引き締まる特別な日のお菓子です。

ふと、母に会いたくなった時、
声が聞きたくなった時、
「箔の音」を片手に母と私の
ティータイムは始まります。
いま悩んでいること、
考えていること、楽しみなこと。
他愛もないことを
一人つぶやきながら、
私は心の整理を
しているのかもしれません。
日常の中にあって
ピリッと気持ちが引き締まる、
祈りにも似た特別な時間。
それさえあれば、
私はまたいつもの日々を
取り戻せるのです。

お供えのイメージ お供えのイメージ

Store information

  • 金沢 うら田

    金沢 うら田

    所在地:【八日市出町店】
    金沢市八日市出町862
    電話番号:076-214-3554
    営業時間:月、水~土 9:00~18:00
    日 9:00~17:00
    定休日:元旦、1/2、火曜
    https://www.urata-k.co.jp/

    箔の音

    カステラ生地で黄味あんを包み、
    伝統の金沢金箔を添えた優雅なお菓子

  • 祈りの道具屋 まなか

    祈りの道具屋 まなか

    所在地:【銀座ショールーム】
    東京都中央区銀座1-15-4
    銀座一丁目ビル 9F
    電話番号:03-5579-5671
    営業時間:10:00~18:00
    (年末年始除く)※予約制
    https://manaka-store.com/

    GAKU
    -桐-

    額縁をイメージしたデザインと
    優しい素材の組み合わせは、
    どんなインテリアにも馴染みます